エイジアンティークでカリプソ・ショーを堪能した翌日、私はまた非常に頑張って朝4時半に早起きした。
朝何とか目を覚ました後、荷物を纏めてツアー会社のオフィスに向かうことを考えると、たとえそのオフィスがホテルの100m圏内にあろうとも、集合2時間前には起きないと荷物のパッキングをして出発することができない。そういう人間なのだ(会社に通っていた時は、会社と家を決まった手順で往復するだけで、面倒な荷物の整理も特になかったから、始業3,40分前に起きてもギリギリ間に合うことができた)。
そうやってようやく6時半にオフィスの前に行くと、今回はすぐにツアー会社のスタッフがやって来て、また昨日と同じように移動用のバンに私を案内した。
今回の行きずりの仲間たちは、昨日とは違っていた。
名古屋出身のアキコさんに、大阪出身のアサミさん。それと、福岡は粕屋郡出身の男性(なんと、智さんと同じでまた粕屋郡だ!)。
うとうとしながらバンに揺られて数時間、タイ・カンボジア国境のレストランで昼食を取り、出入国審査で長時間待たされつつも、徒歩で国境を通過する。歩いて国境を越えるのは、初めての経験だ。
その後、バスに乗り換えてこのままシェムリアップに向かうのかと思いきや、バスはタイ国境を出てすぐの大きなバスターミナルに停車し、全員が降ろされた。次にどうすればいいのかとガイドの話を聞くと、次はタクシーに乗ってシェムリアップまで行くらしく、日本人たちはタクシーに同乗してシェムリアップに向かった。
(ちなみに、ツアーの内容によってここでタクシーに乗るか、普通のシェムリアップ行きバスに乗るかが変わるらしい。ところがバスは次いつ来るか分からない、多分数時間後だなどと寝ぼけたような話が始まり、国境越えまで一緒だったドイツ人カップルが「自分でカネを払ってタクシーに乗るよ」とガイドに言うと、ガイドは「だめだ。俺はカネを貰ってるからあんたのバスのチケットに対して責任がある。バスに乗れ」などと怒り出し「あんたに責任なんかないよ、カネは自腹で出すと言ってるだろ」というドイツ人カップルと口論していた。急げと言ってさんざん急かした割に何分も待たせたりとサービスはテキトーなのに、責任だなんだということにはなぜかシビアなガイドだった)
そうこうしてシェムリアップに向かったが、タクシーはえらくのんびりとしたペースで、どこまでも限りなく続く水田をひたすら走った。運転手曰く、2時間はかかるという。
走っても走ってもあまりに風景が変わらないため、仲間たちはやがて寝始めた。自分もまた寝た。次に目を覚ました瞬間、たまたま視界の中に「Siem Reap Province」と書かれた標識が目に入ったが、風景は寝る前と全く変わっていなかった。
仲間たちもやがて起きてきて「全然風景変わってないね…」などと口々に話した。そう、あまりにも風景が変わらなすぎて、だんだんみんな不安になってきたようだった。シェムリアップという町がどんな所なのか想像もつかなくなってきたのだ。
もしかして、畑のど真ん中にホテルとアンコールワット遺跡だけがぽつんとあるような場所なのではないか…?
そんな想像さえ、あながち笑い話とも思えないくらいに風景に変わりがなかった。一体全体、どれだけ大量のコメを作っているのだろう。どこかに輸出しているのだろうか? それにしては、カンボジア米なんて聞いたことがない。でも、これだけの面積ならものすごい量が採れそうな気がする…。
誰かが「これホントに進んでるの?」と言うので、「一応さっきシェムリアップ州に入ったみたいですから、進んでるはずですよ」というと「良く見てたねそんなの」と言われたが、何のことはない、目が覚めたらたまたま州境だっただけの話だ。
その次は道路脇の石の標識に「Siem Reap 23km」と書かれているのを発見し、一同にようやく安堵の色が広がるのだった。
そうして少しずつ風景が街中に変わっていき、シェムリアップに到着したが、シェムリアップはなんだか一言で言っておかしな街だった。
あちこちに高級リゾートホテルのような立派なホテルがドンドンと建っているにも関わらず、道は舗装があまり行き届いていないらしく、赤茶けた色の土埃があちこちに舞い上がり、街自体がどこか赤っぽい印象を与えている。立派なリゾートホテルの隙間にには、フィリピンの家を更に貧しくしたような佇まいの家々がそこかしこに犇めいている。そうかと思えば、東京あたりにありそうな近代的なビルが突然現れて、その中に旅行代理店のH.I.Sの事務所が入っている。
ホテルに入る道は一般の生活道路のような様相を呈し、舗装はおろか、赤茶けた色の土の道があたかもマリオカートのように、凸凹と上下に波打っている。にも関わらず、舗装されてない道の両脇には、観光客向けの小奇麗なバーやらレストランやらマッサージ店やらがずらずら並んでいる。
わけがわからない…。タイとも何処か違う、謎の国カンボジアが私を出迎えたのだった。
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