2012年11月8日木曜日

深夜急行(タイ国鉄・ペナン~バンコク行き、第13日目)


孫文の家を訪問した後、荷物を纏めてゲストハウスを離れた。ゲストハウスのそばをいつもウロウロしていた人懐こい可愛い猫に別れを告げて、フェリーでペナン島からマレーシア本土側に戻った。
このフェリーは、往路(バタワース→ジョージタウン)は有料だが、復路(その逆)はお金がかからない仕組みである。

バタワース駅から国際急行列車が出発したのは14:20だった。国際急行列車という立派な肩書きとは裏腹に、寝台車が2両だけという冗談のような編成をしている。この列車には後ほどタイ領のハジャイというところで一等車や食堂車が連結され、そこからようやく国際急行列車らしくなる。
(これとは別に、シンガポールからバンコク、バンコクからチェンマイまでの区間を、イースタン&オリエンタル・エクスプレスという、日本でいうトワイライトエクスプレスに相当する超豪華列車が運行している。車輪の付いたホテルがレールの上を走っているようなもので、値段も一番安くて23万から上は90万もする。もちろん、バックパッカーには無縁)

この列車は、夕方ごろ国境を越えた。国境の駅で一度降り、マレーシアの出国審査とタイの入国審査を受けた後、同じ列車に戻ってすぐに出発する。
太陽が完全に沈む頃になると、係の叔母さんが座席のテーブルをセッティングし、ついでメニューを持って夕食と次の日の朝食の注文を取りに来る。その後、次の停車駅で停まったタイミングで、料理が配膳されるという仕組みであった。
運ばれてきたタイカレーを食べながら、暗くなった車窓を眺めると、否応なしに、旅情が増して心が膨らむ感じがしてくる。列車の中で食べる食事は、たとえ少しばかり美味しくなくても、素敵な感じがするものだ。

食事を済ますと、今度は係の叔父さんが現れ、テーブルを外して各人の座席をベッドに仕立てる作業を始める。一人旅の客にも4人掛けのボックス席が1つ割り当てられているが、このL字型の座席のシートを倒してスライドし固定した後、その上にマットとシーツを掛けると、それが下段ベッドに変わってしまう。
上段には飛行機の荷物入れと同じような棚があり、それを開けると、それが上段ベッドになる。後はカーテンを引くと、ちょうど二人は寝られる個室が出来上がる。

言わずもがなだが、今の日本で寝台列車はほとんど実用性を無くしていて、乗りたい人が趣味で乗るものに近い。
日本には世界に誇る新幹線や飛行機があり、わざわざ列車で寝る必要性がないくらい早いのだから、それはそれで良いことだが、やはり寝台列車には寝台列車にしかない趣がある。

ベッドに横になって、外を眺めた。
外は完全に暗くなってしまい、見ても何の面白みもない。しかし、ベッドにうつ伏せになってみると、自分の体のすぐ下を、車輪がゴトゴトと音を立ててレールの上をひた走っている音が全身に伝わる。その不思議な感覚がなんとも言えず面白くて、まるで、列車を抱いて眠っているかのように思える。
けれど、停車したタイミングで外に出たなら、駅のプラットフォームが当たり前のようにそこにあり、旅行者たちが行き交っている。そのギャップがまた、楽しい。

旅人たちは、こうして一時の休息を得ながら、次の目的地・バンコクに向かった。

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