シンガポールという国がある。
マレー人、インド人、中国人の3つの民族が混ざり合って暮らすこの国は、元はマレーシア連邦の一員として、マラヤ・サラワク・サバと共に独立を果たした。ところが、1963年に中央政府との間に民族間の仲違いが生じ、追い出されるようにして独立した。
独立の当時、リー・クアンユー首相は演説中に泣いたという。本人はシンガポール独立を望んでいなかった上に、共にマレーシア独立のために長年戦ってきたマレーシアの戦友・ラーマン首相に、民族間の融和は不可能だといって追い出されてしまったようなものだからだ。
それ以来、シンガポールは一つの都市がまるごと国家になった都市国家として発展しつづけ、今やシンガポールは国全体が大都市のようになっている。
けれど、シンガポールは表向きの発展とは裏腹に、長年独裁が続く独裁国家である。野党があり選挙もあることにはあるが、野党が勝った選挙区には制裁があるとか、反体制的なジャーナリストなどが弾圧・国外追放を受けたりしているという。ゲリマンダーや言論統制も日常茶飯事とのことだ。
シンガポールが『明るい北朝鮮』と言われる所以だ。
そんなシンガポールに実際に行ってみたが、シンガポールは噂通りの大都市であった。
街は綺麗で美しく、街にはインド風、マレー風、中国風の人々が、縦横無尽に行き交っている。高層ビルがこれでもかというほど立ち並び、圧倒的な情景を演出する。東京と横浜を足して二で割ったような印象だ。
実際、街には何の問題もないように思える。様々な人種が衝突することなく混ざり合い、街は発展し続けているのだから。
こうした人々の中には、祖国を離れて、経済的に豊かなシンガポールに移住してきた人たちもいることだろう。つまり、そうした人々は民主主義でも貧しい国より、独裁でもいいから豊かな国のほうが良いと思っているはずである。
一体、どちらが正しいのだろうか?
きっと、シンガポールはリー首相が亡くなってから、あるいは今の首相(リー首相の息子)が辞めてから、新たな物凄いカリスマが現れない限り、一悶着起きると思う。
独裁制で野党を支持すると制裁されるから、国民はあまり政治に関心がないというし、そういう国民が民主主義をしても上手く行かないのはよくある話である。
また、カリスマがいなくなった後、各民族が自分たちの主張ばかりして衝突した結果、国が砕け散ってしまったユーゴスラビアの例もある。
果たして、シンガポールはこれからどうなっていくのだろう。
きっとそんな話をすれば、シンガポール人は笑って、「うちのことなんかより、お前の国の首相がころころ変わるのを心配しろよ」と言うのだろうけれど。
そんなことを思いながら眺めるシンガポールの街並みは、美しい限りだった。
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