<ビザ取得~入国の様子>
まず、アンバサダーホテルのマネージャーにメールでビザ取得代行の依頼をし、パスポートの顔写真ページのスキャン画像をメールで送付する。その後、各地にあるソマリランドの送金会社・ダハブシール(Dahabshiil)のエージェントで60ドルを送金すれば、数日後にメールでビザが送られてくるので、それを印刷して持っていけばOK。わざわざエチオピアくんだりのソマリランドの連絡事務所に取得しに行く必要はない。エージェント一覧はダハブシールのHPにあり、日本から最も近い場所としては香港にある。ドバイにも複数のエージェントがあり、便利である(日本国内にはない)。
アディスアベバの空港のソマリランド行きは何故か国内線扱いなので、アディスアベバに到着したら国内線ターミナルに移動すること。
なお、アンバサダーホテルのベルベラからハルゲイサまでの送迎は片道250ドルと高く、飛行機が遅れたなどの理由でソマリランド行きの飛行機に乗り損ねて1日遅く行かなければならない時などに「護衛を空港で一泊させねばならないので追加料金250ドルを払え」と迫られたりするので、ビザだけ頼んで後はベルベラのタクシーの運転手などに頼んだほうが安上がりで済む(私は500ドルも払いたくなかったので「そんなにかかるなら行かない」と連絡し、アンバサダーホテルのことは放置することにしたが、別に問題なかった)。
ハルゲイサ-ベルベラ間の移動はタクシーで100ドルなら良心的で、護衛にもれなく10ドルが掛かる。護衛を付けないと、各地のチェック・ポイントで誰何され、面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いらしい。
なお、入国時に空港税を34ドルを現金で支払う必要がある。出国時にも、34ドル+セキュリティ代10ドルを支払う必要がある。
<ハルゲイサ・ベルベラの街中の様子>
建物は平屋建てのレンガ造りの建物が多いようで、その他雑貨屋台、カート屋台、両替屋台などがあちこちにある。三階建て以上の高さの建物はあまり多くなく、ハルゲイサ中心部にある建設中の六か七階建てのビジネスセンターのビルを「これが新しく建設中のビルだ」と運転手に嬉しそうに紹介された。
意外なことに、建設中のビルの足場の骨組みに、インドのような発展途上国に多く見られる竹ではなく、鉄パイプを使ったきちんとした足場を組んで作業しているビルがあったが、その他のビルでは相変わらず竹の足場が使われているものもあって、単に建設主の資金力の違いではないかという印象を受けた(運ちゃんいわく、「イサックのビル」ということを強調していたので、ビルひとつにも氏族がバックにあるのだというのが印象深かった)。
その他、各建物の扉は「青・白」のソマリアカラー、「緑・白(プラス赤)」のソマリランドカラーが頻繁に使用されており、もしかしてこれは各戸がソマリアを支持しているか・ソマリランドを支持しているかの違いなのではないかと一瞬推理したが、青・白の扉の建物にソマリランド国旗が書いてあったり、青・白の扉の建物の屋上にソマリランド国旗が翻ったりしているのを見ると、どうもそんな政治的な立場を示すようなものではまったくなく、単に伝統色だからか、好きな色だから使っているだけに過ぎないように見えた。
他にもソマリランドカラーは車止めや塀・門扉など街のあちこちにみられ、6日の滞在のうち、ソマリア国旗を見ることはついにただの一度もなかった。
大きな道路は舗装されてはいるが、所々穴が開いたまま放置されており、政府は確かにあまりインフラにお金を回せていないように思える。その他の細い路地などでは、舗装はされていないところが多い。
<治安の様子>
街中、郊外ともに、危険な兆候は全く感じられず、物騒な連中の姿は影も形もない。一応郊外に出る時は護衛を付けなければならない規則になっているそうで、ハルゲイサ・ベルベラ間を移動した際はAKを背負った護衛が付いてくれたが、彼らもカートをやりながらダラダラしているだけという印象で、本当に危険な敵が襲ってくるとは彼ら自身考えていないように見えた。
郊外に出ると、所々にある小集落以外、ラクダ、ヤギの他にはたまに遊牧民が歩いているくらいで、人の気配は全くない。
<人々の様子>
まず、私を見かけると「チャイナ!」か「チーナ!」(「ジャッキーチェン!」という人も一人いた)であり、畢竟、珍獣が動物園の檻を抜けだして街をさまよっているが如き扱いを受ける。街ですれ違って声を掛けてきただけの人も含めればおそらく50人以上のソマリランド人に出会っていることになるだろうが、ひと目で私を日本人と見ぬいた人は、一人だけであった。
挨拶したり話しかけてくる人はかなりいたが、別段何かを企んで声をかけてくるわけではないらしく、単に物珍しくて声をかけてくるだけのようである。挨拶を交わしたり、無視したりしても、別に追いすがってくる様子もなければ、何かを売りつけてくる様子もない。観光地ズレしていないためであろう。
子供たち、特に女の子たちは「ギブミー・マネー」してくる傾向が非常に強い。あげないでいても特に縋りつかれたりするわけではないし、向こうも本気で欲しくてやっているのかどうか疑わしいところがある。その子たちを運ちゃんがカラのペットボトルを投げつけて追い払ったのにはびっくりしたが、子供たちも笑いながらさっさと逃げ出してしまい、別に追い払われたからといって気にしている様子はなかった。他の大人たちは「ギブミー・マネー」してこないが、「年配のお母さん」風の人だけは時々してきた。
また、物乞いもハルゲイサ中心部に何人かおり、地雷か戦争か何かで足のない人などが道端でお金を求めているのを見た。
イスラムの強い土地柄だけに女性の写真はあまり撮らないようにしていたが、「撮っていいか」と両替屋台のオバさんに聞いたら何の問題もなかったり、通りかかりの道端の女の人が投げキッスしてきたり、そうかといえば道端で風景写真を撮っていたら、たまたま正面にいたオッサンが「何故俺の写真を撮っているんだ」と言いながら近づいてきたりもした。
高野秀行さんが「アフリカ人とは思えないくらい動作がキビキビしている」といっていたが、たしかに気が早い性質なのか、ウェイターが小走りに注文を取りに来たり、電話で要件が終わると挨拶もそこそこにさっさと電話を切るなどの習慣があるようだ(そうかと言えば、Aさんが「政府の中に働いてない奴が多い」と言ったりしているので、よくわからない)。
男性は特に声が大きく、電話などで怒鳴っているように喋る人も多いが、見ていると別に怒っているのではなく、単に大声でしゃべる習慣なだけか、カートでハイになっているだけのように見える。
<人々の対ソマリア感情の様子>
ソマリランド人の南部ソマリアへの反応はあまりよくない。
人々に南部ソマリアについて聞いてみると、インターネットで散見される「ソマリランドはソマリアと違って平和でいいだろ」そのままの反応が返ってくる。
南部の人々については、「ブラザー」ではあるが「同じ国ではない」という反応で、兄弟国ではあるという認識は持っているようであるから、「ブラザーはブラザーだが、ダメなブラザーとは一緒に暮らしたくない」ということなのだろうと忖度した。Aさんの言うように、南部の氏族がソマリランド側に対して補償を行なっていないという背景も不仲の理由にあるのであろう。これから氏族間の和解がもし達成されたら、その時南部ともう一度やり直すつもりなのかどうかまではわからなかった。
<食事の様子>
ソマリランド人の主食は、イタリアン・パスタかご飯である。その他に、ゆでた山羊肉料理、焼き魚料理、スープなどがあるが、どれも驚くほど日本人の口にあい、「現地民には美味しいんだろうけど、日本人の口にはちょっと…」というものは全くお目にかからなかった。
パスタは大量に茹でおきしておいたものにソースを掛けるという日本風のスパゲティとよく似た作り方である。ソースはじゃがいも、にんじん、玉ねぎなどを入れた薄いカレールーのようなものや、ミートソース、トマトソースなどがあり、アルデンテという概念はまったくないが、おいしかった。この国の料理は何を食べてもだいたいうまいので、毎食が楽しみですらあった。
コーヒーはアラビアンコーヒーのような濃口のものが多く、ソマリティーはインドのマサラチャイに似たミルクティーである。
<カート(チャット)の様子>
ベルベラ-ハルゲイサの移動中にカートを一房奢ってもらい、他にすることもないので2時間半ひたすらカートを食べていたが、量が足りなかったらしく、それほどハイにはならなかった。
ただ、一房の葉っぱを食べきった後に、若干気持ちが楽になったような気持ちになり、「荷物が行方不明になり旅を続けられるかどうか分からない」という状況にもかかわらず、「まあ、それも旅の一つさ」などと明確に気楽な気持ちになったのが印象的だった。なお、別段酔っ払ったような酩酊した状態にはならなかった(だから運転しながらカートをやるのであろうが)。
<店先の様子>
壁にぎっしりと在庫を敷き詰めるのが好きなのか、いやに物が豊富にある印象を受ける。ペットボトルの水、並びに「コカ・コーラ」「ファンタ」「スプライト」の三種類はソマリランド製(現地のSBIの工場が稼働を始めた2011年以降で、それより古い500mlの在庫はおそらくドバイ経由の代物と思われる)。
「キットカット」「ヌテラ」「リプトン」「ウィータビックス」などの国際ブランド品もみつかる。お菓子はドバイで作られたものが多く輸入されているようで、その他石鹸などはMade in C.E.のものも見られた。その他市場に行くと、絨毯やおもちゃ、電化製品なども大量に売られている。
<貨幣の様子>
ソマリランド・シリングは500シリングが上限と言われていたが、2011年以降は5000、1000、500になったらしく、500未満の貨幣は消滅して一度もお目にかからなかった。
そのため、かつてほど「大量に現金を持ち歩く」必要はなくなったようだが、それでも大量の枚数が必要なことにかわりはなく、アメリカ・ドルのほうがより普通に通用する(ZAADの通貨単位もドルであり、ソマリランド・シリングではない)。従ってアメリカドルを持ち歩いていれば、ソマリランド・シリングがなくても不自由はしない。
とはいえ、カンボジア・リエルのように、「ドルで買い物をした後に付いてくる抽選補助券」レベルの泣くほど悲しい扱いを受けているわけでもないようで、国民の間での重要度は「カンボジア・リエル<ソマリランド・シリング<ミャンマー・チャット」といったイメージである。
また市民は人力でデノミを敢行しており、「5シリング」と言われたら「5000シリング」だったり、「250シリング」だったら「2500シリング」だったりする。
なお、ATMは存在しない。従って、旅行前に事前に大量の現金を用意しておく必要がある。
<車の様子>
ソマリランド人は「マーク2」「ランドクルーザー」「タウンエースノア」などが好きな様子で、「ヴィッツ」はハルゲイサ市内のタクシーなどに多く使われていた。
日本で使われていた車が塗装も変えずにそのまま使われているのが特徴で、前に使われていた会社の社名などが入った車が大量に街中を走っているのはコミカルですらある。同じく社名が入ったままの日本車が走り回っているミャンマーと非常に似ている。
<インターネットの様子>
インターネット環境はあまりよろしくない。ホテルでの使用形態は無線LANだが、根本的に速度は極めて遅く、頻繁に接続が途切れることがある。安宿のみならず、マンスール級のホテルですら同じであるので、プロバイダー側の問題と思われるが、確認はできなかった。
なお、一般市民が普段携帯でネットを使っているかどうか、自宅でネットを使っているかどうかは確認できなかったが、「Facebookのアカウントを持っている」という人や、ホテルの受け付けのパソコンでFacebookに興じている人はいた。
。インターネットカフェは、ハルゲイサに一軒のみ見かけたが、他は見かけなかった。
。インターネットカフェは、ハルゲイサに一軒のみ見かけたが、他は見かけなかった。
<ZAAD(サード、サッド)の様子>
電子マネーサービスのZAADは、外国人でも簡単に登録できる。
その後、パスポートの顔写真ページとソマリランドビザのページのコピーを用意して、Telesomの事務所に行き、係員の説明を聞きながら必要事項を係員に話していけば、小一時間くらいでZAADのアカウントを開設することができる。
その際、ソマリランド人の知り合いの名前が一人必要であるので、タクシーの運転手とでも親しくなっておき、電話番号と名前を聞いておけば、ZAADの登録時に使用できる。勝手に名義を借りても連絡が行くわけでもなんでもないようで、何の問題もない。
ZAADの使用方法は簡単で、街中にいくらでもある両替屋台に行ってドルを渡し、自分の電話番号を示せば手数料なしで入金してくれる。
大抵の雑貨屋や屋台にはZAAD番号(個人の場合は電話番号で、商店・ホテルの場合はマーチャントNo.)が書いてあり、どこでも使用することができる。ホテルやレストラン、タクシーの場合も同様で、ホテルならZAAD番号がレシートに記載されている。
使い方は簡単で、「*888#」にダイアルするとメニュー画面が現れ、「2.Send Money」(個人宛て)または「4.Pay Bill」(商店宛て)を選択し、画面に従って入金額を入力すれば、数秒後には相手に入金される。出金することもできるようだが、両替屋台で頼めるのか、Telesomの事務所ですべきなのか、試していないのでわからなかった。
またZAADは募金にも利用されているようで、地元のテレビの放送中に、ZAAD番号が字幕スーパーでドンと出てくることがあった。なるほど、これなら携帯電話から好きな金額を即座に入金できるんだから、かなり便利と膝を打った。
またZAADは募金にも利用されているようで、地元のテレビの放送中に、ZAAD番号が字幕スーパーでドンと出てくることがあった。なるほど、これなら携帯電話から好きな金額を即座に入金できるんだから、かなり便利と膝を打った。
<ホテルの様子>
- マンスール・ホテル
日本の帝国ホテルにあたるホテル。ハルゲイサの外れの閑静な一角にあり、入り口にチェックポイントがあったり、にも関わらず鹿が5匹も住んでいたり、かといえば政府の記者会見が行われたり、UNDPの職員が住んでいたりと、面白い場所。現地の上流階級の社交場にもなっているようで、身なりの良い人々が詰めかけている。レストランの食事も美味しい物ばかり。中心部から外れているために自分の足のない旅人はタクシーを使わなければならず、ホテル代以上に高く付くのが難点。コテージで一泊35ドル。
- インペリアル・ホテル
大統領府付近にあるホテル。レストランがあり、UNDP職員のAさん御用達。部屋は薄暗く、それなり。一泊15ドル。
- オリエンタル・ホテル
ハルゲイサ中心部にあるホテル。1953年創業の老舗。市場やZAADの事務所も近くにあり、何かと便利。内部のレイアウトも洗練されており、居心地がよい。ツアー会社の事務所が併設されており、ここからサファリツアーなどにも出られる様子。一泊15ドル。
- ヤヒェ・ホテル(Yaxhe hotel)
ベルベラ市街地、Telesomの事務所付近にあるホテル。安宿で温水もないが、一泊するには何の問題もない。一泊8ドル。
- マンスール・ベルベラ
マンスール・ホテルのベルベラ支店。ベルベラ市街地から遠く離れたビーチの目の前にあり、ビーチでのんびり過ごしたい人向け。ただし、クルマがないと移動は困難。一泊50ドル(支店の方が高い理由は、場所柄夏は特に暑く、エアコンを設置しないと滞在できないため)。
<観光地の様子>
- ラースゲール遺跡
ハルゲイサからクルマで1時間弱の位置。幹線道路をそれて道無き道を30分行くとお目にかかれる。ビジターノートを確認すると、1日2人以上は訪問しているようで、国籍はアメリカ、イギリス、フィンランド、ドイツ、タイ、ソマリランドなど。日本人は1人しか発見できなかった。観光地として整備されているわけではないが、荒々しい荒野の中の岩山に、古代の壁画がそのまま残されており、指で触れるほど近くで見物できるのが迫力。
- ベルベラビーチ
マンスール・ホテルの支店、マンスール・ベルベラ付近のビーチは砂の質もよく海の色も綺麗で、景色も非常によい。
ただし、ゴミのポイ捨てが多いのと、海に入るとウニが沢山転がっているのでうっかり踏まないように気をつけないといけないのが難点。踏むと痛いが、特に毒などはないとのことなので心配は不要。ビーチの海深はあまり深くなく、100m以上は行かないと足がつかないほど深くはならないとみられる。実にのんびりしていて平和そのものなので、アデン湾に面した海でリラックスして過ごせる。
ただし、ゴミのポイ捨てが多いのと、海に入るとウニが沢山転がっているのでうっかり踏まないように気をつけないといけないのが難点。踏むと痛いが、特に毒などはないとのことなので心配は不要。ビーチの海深はあまり深くなく、100m以上は行かないと足がつかないほど深くはならないとみられる。実にのんびりしていて平和そのものなので、アデン湾に面した海でリラックスして過ごせる。
- シランヨ大統領
大晦日にマンスール・ホテルのフロントにしつこく頼んで連絡をとってもらい、タクシーで大統領府前まで連れて行ってもらったのだが、とうとう会えなかった。電話がかかってきて、正体不明の老人から「明日なら会える」との言葉をもらったが明日の何時、何処なのかの指示はまったくなく、待機していても音沙汰がないので、大統領府までもう一度行ったが、結局セキュリティに停められて会えず、日本人のAさんから色々話も聞けたのでもういいやという気分になり、諦めた。
<その他>
実際に行ってみて気づいたことは、「何かとカネのかかる国」であるということだった。
もちろん、食事などはそれほど高くはないし、ホテルも15ドルで十分な設備のあるホテルに泊まることが出来る。しかし、入出国時の空港税68ドル、ビザ取得代60ドルはもとより、タクシー代が日本並みに高いことに注意しなければならない。
ほんの少し移動しただけで数千円が飛んでしまうし、可能であれば、ハルゲイサ-ベルベラ間の移動はしないか、するにしても1回で済ませたほうが節約になる(ハルゲイサ空港が再開されれば、ハルゲイサとベルベラを往復する必要はなくなるだろう。ハルゲイサ空港は今年の2月か3月には開港する見込みとのこと)。
特にマンスールホテル・アンバサダーホテルなどの郊外ホテルに泊まると、ホテルと市街地をタクシーで往復するだけで一泊分が吹き飛ぶので、必要でなければハルゲイサ中心部のオリエンタルホテルなどに泊まったほうがよい。
その他の写真は、こちらにあります。
その他の写真は、こちらにあります。
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